前回に続き、今回はニキビ治療の中心となる「保険診療」について詳しくお話しします。
「赤ニキビを治す時代から、コメドを管理し再発を防ぐ時代へ」
かつてニキビ治療といえば、赤く炎症を起こした状態になってから抗菌薬(抗生物質)の飲み薬や塗り薬でアクネ菌を抑えるのが主流でした。しかしこの方法では、すでに炎症が起きたニキビにしか対応できず、ニキビの「もと」となる毛穴の詰まり(コメド、面皰)そのものにはアプローチできませんでした。お子さんのニキビで悩まれているお父さん、お母さんが子供の時に比べニキビ治療は格段に進歩しています。「ニキビは青春のシンボル」などと呼ばれていた頃に学生時代を過ごした方は「子供のニキビなんですけど・・」と申し訳なさそうに外来受診されることがありますが、ニキビは立派な皮膚の疾患です。一昔前とは治療法が全く異なりますので、お子さんのニキビもそうですが、学生時代にコメド治療薬がなかった年代の方もどんどん受診にきてください。
さて治療薬です。大きな転機となったのが、2008年に発売されたディフェリンゲル(アダパレン)です。2026年現在18歳の子供たちが生まれた年ですね。日本で初めて承認されたコメド治療薬で、炎症が起こる前の段階から治療できるようになりました。2015年にはベピオゲル(過酸化ベンゾイル:BPO)が登場。こちらは2026年現在11歳の子供たちが生まれた年です。その後、アダパレンとBPOの配合剤であるエピデュオゲル、抗菌薬とBPOの配合剤であるデュアック配合ゲルも使えるようになり、選択肢が広がりました。
BPO(べピオ)の剤形も増えています。
・2023年5月 ベピオローション
ゲルよりしっとりとした使用感で、塗り広げやすい剤形です。刺激症状がゲルより少なくなりました。
・2025年6月 ベピオウォッシュゲル
塗布して5〜10分後に洗い流す、国内初の「短時間接触療法」の製剤です。皮膚刺激や衣類の脱色リスクを抑えながら、毎日の洗顔習慣に組み込んで続けやすくなっています。従来のBPO製剤は12歳以上が対象でしたが、ウォッシュゲルは9歳から使用できます。
こうした薬剤の登場を受けて、日本皮膚科学会のガイドラインも2008年の初版から改訂を重ね、現在は「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」が最新版です。

・抗菌薬(塗り薬・飲み薬)
アクネ菌の増殖を抑え、すでに赤く腫れた炎症性のニキビ(赤ニキビ・黄ニキビ)を改善します。ただしコメドそのものは治せません。
・コメド治療薬(ディフェリンゲル、ベピオ製剤など)
毛穴の詰まりを取り除き、白ニキビ・黒ニキビといった炎症前の段階から治療できます。新しいニキビの予防にもつながります。
ここで大切なのは、抗菌薬だけではコメドが残るため、いったん赤ニキビが治まっても、残ったコメドから炎症ニキビを繰り返してしまうということです。「今あるニキビを鎮める」抗菌薬と、「ニキビができにくい肌を作る」コメド治療薬は役割が違うため、併用して使うのが基本です。
ガイドライン2023では、ニキビの病期を「急性炎症期」と「維持期」に分けています。
赤ニキビ・黄ニキビなどの炎症性皮疹が主体の時期です。重症度に応じて次のように選びます。
・面皰(コメド)のみ
アダパレンやBPOなどコメド治療薬が中心です。抗菌薬は基本的に不要です。
・軽症〜中等症の炎症性皮疹
コメド治療薬(アダパレン・BPO)と必要に応じて外用抗菌薬の併用、または配合剤(デュアック配合ゲル、エピデュオゲル)を使います。
・中等症〜最重症の炎症性皮疹
コメド治療薬(アダパレン・BPO)と外用抗菌剤の併用や、配合剤(デュアック配合ゲル)の使用。さらに内服抗菌薬を組み合わせます。
デュアック配合ゲルはクリンダマイシン(抗菌薬)とBPOの配合剤です。ガイドライン上は炎症期の治療に有効な薬であり、炎症性ニキビができにくくなった維持期の治療には推奨されず、長期連用は避けます。炎症が落ち着いて切り替え可能と医師が判断したら、ほかのコメド治療薬(べピオ、アダパレン、エピデュオなど)にスイッチしていきます。
炎症性皮疹が治まったあとも、目に見えにくい「微小面皰:マイクロコメド」が残っています。この時期に治療をやめると、再び炎症ニキビができてしまいます。
・抗菌薬(デュアックを含む)は中止します。
・アダパレンやべピオ(ゲル・ローション・ウォッシュゲル)を単独または併用して続け、再発を防ぎます。
・維持期の治療は数年にわたって続けることもあります。思春期のニキビはホルモンの影響で皮脂が出やすい時期が続くため、その間は管理を続けることが、きれいな肌を保つポイントです。

ニキビ治療は、1回の受診で終わるものではありません。皮膚のターンオーバーの周期を考えると、急性炎症期の治療だけでもまず約3ヶ月はかかります。そこで終わりではなく、その後の維持期を数年続けることで、再発しにくい肌を保てます。思春期のニキビは、繰り返し炎症を起こしやすい慢性炎症性疾患です。「治ったら終わり」ではなく、コメドができにくい状態を維持する治療を根気よく続けることが、きれいな肌への近道です。現在の子供たちはお父さんお母さんの時代と異なり、コメド治療薬という過去にはなかった治療を受けることができます。しっかり外来通院することで将来の「ニキビ跡」という肌悩みからおさらばしたいですね。

炎症が強い場合には、外用薬に加えて飲み薬の抗菌薬を併用します。当院でよく使用するのはビブラマイシン(ドキシサイクリン)で、そのほかミノマイシン(ミノサイクリン)、ルリッド(ロキシスロマイシン)なども症状に応じて選びます。
ただし、飲み薬の抗菌薬だけで治療を終えると、コメドが残ったままなので、薬をやめたあとに炎症ニキビが再び出てきます。抗菌薬は症状が強い時期に限って使い、落ち着いたらコメド治療薬による維持療法に切り替えるのが基本です。
漢方薬はガイドライン上、アダパレンやBPOといった中心治療を補う補助療法として位置づけられています。体質やニキビのタイプに応じて組み合わせる、選択肢の一つです。
代表的なのはクラシエの十味敗毒湯で、化膿しやすい皮膚の炎症性疾患に用いられます。ほかにも当院ではニキビの状態から荊芥連翹湯、黄連解毒湯、柴苓湯などを補助療法として処方することがあります。これらは内服抗菌剤がなかなか手放せないダラダラ続く炎症ニキビや、大人ニキビにも経験上有効なものがあります。ニキビの状態をしっかり見ながら処方をさせていただいています。
薬での治療と同じくらい大切なのが、毎日のスキンケアです。
洗顔の回数を比べた検討では、1日2回洗顔したグループで、ニキビが最もよく改善したと報告されています。洗いすぎも洗わなさすぎも良くないため、朝と夜の1日2回を基本にしましょう。ただしゴシゴシ洗いは厳禁です。しっかりした泡を作り優しいタッチで丁寧な洗顔を心がけましょう。生え際やあご周り、あご下は石鹸が残りやすいです。注意して流しましょう。

スキンケア用品を選ぶときの大事なキーワードが、ノンコメドジェニックテスト済みです。実は、次の2つは別のものです。
・ノンコメドジェニック
「コメドができにくい」ことをうたう表現です。統一された基準があるわけではなく、メーカーごとの考え方で使われています。
・ノンコメドジェニックテスト済み
実際にコメドができるかどうかを確認する試験を行った製品です。ニキビのできやすさを調べた、という根拠があります。
ただし、テスト済みであっても、すべての人にニキビができないことを保証するものではありません。それでも、何も確認されていない製品より、選ぶ根拠になります。
ニキビを早く治したければ、次のすべてで、ノンコメドジェニックテスト済みの製品を選ぶことをおすすめします。
クレンジング・洗顔料・化粧水・美容液・乳液・クリーム・日焼け止め・ファンデーションなど
すべてをそろえるのが難しければ、せめて治療の中心となる急性炎症期の約3ヶ月だけでも、ぜひ取り入れてください。
BPOやアダパレンは、使い始めに乾燥や赤み、皮むけなどの刺激が出ることがあります。保湿はさっぱり系でもしっとり系でも重度の乾燥肌でも、とにかくノンコメドジェニックテスト済みのものを選べば、薬による治療と両立しやすくなります。
ニキビは「できてから慌てて塗る」ものではありません。抗菌薬だけでは毛穴の詰まり(コメド)が残り、炎症ニキビを繰り返します。炎症ニキビは12個に1個が何らかの跡になると言われています。まず急性炎症期を約3ヶ月しっかり治療し、その後は維持期の治療を数年続けて再発を防ぎます。ベピオにはゲル・ローション・ウォッシュゲルと選べる剤形があり、肌質や生活スタイル、年齢に合わせて続けやすいものを選べます。そして毎日のスキンケアは、洗顔を1日2回行い、ノンコメドジェニックテスト済みの製品を選びましょう。一度の通院では治りません。青春のシンボルでもありません。しっかり通院して治療していきましょう。
次回③では、もっと詳しいスキンケアのお話と、自由診療によるニキビ治療についてご紹介します。
*イラストはmaruho使える。皮膚のイラスト素材集Proより
2004年 三重大学皮膚科入局
病院勤務時代はNICUから老健施設まで幅広い年齢層での診察の経験があり、赤ちゃんからご高齢の方まで診察可能。また三重大学病院ではレーザー外来、日帰り手術外来を担当していた。
3人の子供を育て乳幼児から思春期の肌トラブルも親身に診察。
日本化粧品学会2級、1級、コスメコンシェルジュ保持にてスキンケア相談も可能。