なかい皮フ科クリニック(津市)

医療コラム

夏に気になる水虫 ― 水虫は感染症です

2026年8月22日

汗ばむ季節になると、足のかゆみやニオイ、爪の変色などで来院される患者様が増えてきます。「水虫くらいで病院に行くのは恥ずかしい」と感じる方も多いのですが、水虫(足白癬)は白癬菌というカビの一種によるれっきとした感染症です。放置すれば症状が進行するだけでなく、ご家族やパートナーにうつしてしまう可能性もあります。今回は皮膚科専門医の立場から、足白癬・爪白癬の種類や治療、そしてご自宅でできる対策について詳しくご説明します。

足白癬(あしはくせん)の3つのタイプ

足白癬はできる場所や症状によって、大きく3つのタイプに分かれます。

趾間型(しかんがた)

足の指の間、とくに薬指と小指の間にできやすいタイプです。皮膚がふやけて白くふやけたり、皮がむけたり、赤みやかゆみを伴います。もっとも頻度が高いタイプです。糖尿病の方はそこから細菌感染を併発し蜂窩織炎になることもありますので足の観察をすることを日課にしましょう。

小水疱型(しょうすいほうがた)

土踏まずや足の側面に小さな水ぶくれが多発するタイプです。強いかゆみを伴うことが多く、汗をかく夏場に悪化しやすい傾向があります。汗疱と呼ばれる湿疹のこともあります。治療は真逆になりますので気になる時の自己判断は危険です。

角化型(かくかがた)

かかとを中心に皮膚が厚く硬くなり、ガサガサ・カサカサとした状態になるタイプです。かゆみが少ないため単なる乾燥」と自己判断され、市販の保湿剤だけで様子を見てしまい、発見が遅れるケースが少なくありません冬場のひび割れの原因になることもあります。

爪白癬(つめはくせん)とは

足白癬を放置すると、白癬菌が爪の中に侵入し「爪白癬」を発症することがあります。爪が白色や黄色に濁る、厚くなる、もろく崩れる、変形するといった症状が特徴です。爪白癬は自覚症状(痛みやかゆみ)がほとんどないため気づかれにくく、また靴の中という湿った環境が白癬菌の温床となるため、一度感染すると自然治癒はほぼ期待できません

検査について

水虫・爪白癬が疑われる場合、当院では患部の皮膚や爪の一部を少量採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認する**直接鏡検(KOH検査)**を行います。痛みはほとんどなく、その場で結果が分かることも多い検査です。見た目だけでは湿疹や乾癬など他の皮膚疾患と区別がつきにくいため、自己判断で市販薬を使う前に、まず正確な診断を受けることが大切です。

治療 ― 爪白癬は「塗り薬だけ」では治りにくい

足白癬(皮膚のみの症状)は外用抗真菌薬でしっかり治療できるケースがほとんどです。しかし爪白癬は事情が異なります。
爪は硬いケラチンの層でできており、塗り薬の成分が爪の奥深くまで浸透しにくいという特徴があります。さらに爪が伸びるスピードは非常にゆっくりで、足の親指の爪が生え変わるには1年から1年半程度かかることも珍しくありません。この間、薬剤が病巣まで届きにくいことが、爪白癬治療のハードルになっています。
実際の治癒率を見ても、その差は明らかです。
外用薬(塗り薬)のみ:治癒率はおよそ10人中2人程度
内服薬(飲み薬):治癒率はおよそ10人中6,7人程度
内服薬の中でも、当院では**ネイリン(ホスラブコナゾール)**を選択肢としてご案内することが多くあります。ネイリンは爪への移行性に優れ、短期間(12週間、1日1回の内服)で治療を完了できる薬剤で、従来薬に比べて通院・服薬の負担が少ないことも特徴です。肝機能などの定期検査を内服前と6~8週に1回行いながら、安全に治療を進めていきます。ワーファリンの内服をしている場合は服薬できない場合もありますが、従来の爪白癬内服薬に比べ飲み合わせの心配はほぼなくなっています。持病との兼ね合いもありますので、内服が可能かどうかは診察の上で判断いたします。

ご自宅でできる予防・生活改善

治療の効果を高め、再発を防ぐには、ご自宅でのケアも欠かせません。
バスマットはこまめに洗濯・乾燥させる

白癬菌は湿った場所で長時間生存します。使用後は風通しの良い場所で完全に乾かしましょう。

靴は毎日同じものを履かず、2足以上をローテーションする

一度履いた靴は湿気がこもるため、最低でも1日は休ませて中までしっかり乾燥させることが重要です

靴の中の除湿を心がける

除湿剤の使用や、可能であれば天日干し・陰干しで湿気を飛ばしましょう。

足を清潔に保つ
入浴時は指の間まで丁寧に洗い、しっかり水分を拭き取ってから靴下を履きましょう。
家族みんなで治療に取り組む
水虫は家庭内で感染が広がりやすい病気ですバスマットやスリッパの共用を避け、ご家族に同じ症状がある場合は一緒に受診・治療することをおすすめします。1人だけ治療しても、家庭内に感染源が残っていると再感染してしまいます。

おわりに

水虫・爪白癬は「恥ずかしいもの」ではなく、正しく診断し、適切な治療を行えば治すことができる感染症ですとくに爪白癬は自己判断での市販薬だけでは治りきらないことが多く、内服治療が有効な選択肢となります。「もしかして」と感じたら、悪化する前にぜひ一度ご相談ください。

執筆・監修:なかい皮フ科クリニック 
院長 中井康雄 皮膚科専門医

2001年 三重大学皮膚科入局

国立がん研究センター中央病院で悪性黒色腫を始め皮膚癌について学び、三重県において皮膚癌の手術から薬物治療を行う体制を構築した。また三重大学皮膚科の外来医長、病棟医長を務めた経験から一般的な皮膚疾患に加え、クリニックでの皮膚癌早期発見、また皮膚腫瘍手術に対応。